“色香に惑う”は、種族繁栄と存続の術。
色香を発する能力も、色香に誘われる能力も、生物が生き続けるために進化させてきた命の偉業。
生命の本能「性」のなせる仕業。
あらゆる三千界の男子の諸々の煩悩を合わせ集めて一人の女の業障とす
・・ブッタの教え「涅槃経」から
外面如菩薩 内面女夜叉 (外面は菩薩のようで、内面は夜叉、それが女性)
・・大乗仏教の思想「唯識論」から
かと思えば、
浄土真宗の開祖、親鸞は、自身を“煩悩具足の凡夫”と公言し妻帯し魚も肉も食べたという。
明白なことといえば、
「性」の考え方は、背景となる社会と文化に由来するということであろうと。
いつの世も「性」を中心に集団は、構成されているのだから。
「性」がなければ、人類はない。
「性」のあり方をとやかく言うのは、時代の都合。
「性」の快楽は、人類が存続し繁栄するために生みだされた貴重な感覚。
そして、「性行動」は、意思疎通、コミュニケーションのツールに昇華していく。
雄の側からの接触、雌の側からの接触、本来は自在。
適応すべき環境があって、そこに合わせて生きる命のテーゼは、生殖であれ環境の適応だから。
地球上のたくさんの生物が有性生殖に適応した。
染色体の混交は子孫繁栄に有利に働くから。
そのために「性」は生まれた。
単独では成立しない「性」。
雄と雌の共同作業が「性」。
そして、子育てには、さらなる共同作業を必要とした。
「性行動」の発展形が会話であるといえるのかもしれない。
社会の基礎は家族。
家族は「性」の単位。
子育て集団から、私有財産を継承する集団へと、社会が変化する中でも「性」は軸にあった。
やがて、「性」は法律や規範で規定されるようになる。
家族制度。
婚姻における一夫一婦制。
実子の定義等・・。
社会が経済を中心に動くようになると、貨幣価値であらゆる価値が決定される。。
富を生み出す労働力、貨幣を使う消費者として、ヒトはシステムの中で単一化されていく。
支配する者と支配されるもの、持つ者と持たざる者。
ヒトに、明確な種類と階層が生まれる。
富が中心にある社会を支えるためにヒトは一定、数として必要とされる。
そこでも、「性」はなくてはならない。
なくてはならない「性」ではあるれけど、制限が加わる。
現代社会、資本主義経済社会では、ひとりひとりのヒトに固有の価値は必要としない。
社会はヒトに、システムの中の、ひとつのパーツとしての役割のみ要求する。
ヒトはバラバラなって、つながりが見えなくなる。
時間に追われる暮らしは、ヒト同士のコミュニケーションを衰退させる。
働くことに喜びという感動を喪失させ、時間単位の報酬で生きる社会の誕生。
文化・芸術に至るまで、子育て教育にいたるまで、誕生から墓場まで。
経済と化した裏側が透けて見える。
心の底からの笑い、
感動の涙、
無償の愛、
それらをも、飲み込んで資本主義経済を後押しする。
心を操作する社会。
心が経済に支配される社会、それが資本主義社会の行き着くところなのだろう。
所有欲は「性」の根源でもあるだろう。
「性」の芽生えは、相手を欲し、愛おしさを生み、心を生み出した。
欲する心は、よりよい遺伝子を求めて攻撃するエネルギーをも生み出した。
平穏と攻撃。
人類の歴史は、語っている。
バランスはコミュニケーションの力。
風景の中に、会話の中に、日々の暮らしの中に心揺さぶられる瞬間はどれほどだろう。
朝の目覚めに喜びはあるだろうか。
一日の終わりに充足はあるだろうか。
炊きたてのごはんに感動はあるだろうか。
風呂の湯加減にホッとしているだろうか。
コンピューターに過剰に依存した人間関係は、ヒトと直接触れ合う脳を退化させ始めた。
「性」の逆行。
「テクノストレス」と呼ばれる、若いヒトに発症する勃起障害がある。
ヒトとの触れ合いで繋がる脳の回路、「性」の快楽回路の退化?
ヒトでなくコンピューターを前にしたとき、脳内へのドーパミンの放出がはじまる。
心はドキドキワクワク、テンションは瞬時にハイレベル。
ヒトとヒトのつながりは、時間と忍耐を必要とする。
強い刺激は、穏やかな刺激を凌駕する。
「性」の進化は止まった?
触感の快、五感の快が失われつつある社会、当然「性」の快もなくなっていくのだろう。
快感を実感できない脳になっていく。
それは、ひょっとしたらヒトにとって快感を必要としない社会の到来?
ヒトの社会は習慣の伝達によって成り立っている。
三食の食事、箸を使う食事マナー、食事の前には手を洗う・・・
ヒトの脳は、無意識の中で習慣を行い、習慣化は脳細胞の構造変化をもたらす。
習慣とは、脳の設計図にはないことを無意識のうちにすること。
目と目を合わせて頷きあう、おいしいものを食べて微笑む。
笑い泣き怒り喜び、生きる実感は習慣から。
習慣は文化。
習慣はヒトから学ぶことでしか身につかない。
時間をかけて、くり返しの連続、手間隙のかかるコミュニケーション。
ヒトは、ヒトから直接学ばなければいけないことがたくさんある。
心傷つくことに恐れる社会は、集団のつながりを拒否する。
「性」が消えていく。
それは、人類滅亡への第一歩。
ヒトよ! 色香に惑え!